James Brownの"Chicago"を聴きながらダウンタウンの南方へ。
この日の朝食、そして最後のシカゴフードはギリシャ料理のジャイロ。香辛料を仕込みシュラスコみたいに吊るして焼いたビーフを、生の玉ねぎ、トマトと一緒にピタパンでくるんでヨーグルトソースで食べる。とっくに肉食には飽きているが、これはこれでかなり美味いので困る。
シカゴを発ち、I-55を南へ。見上げなくても空が広がる風景。ビルに切り取られた東京の空を、同じ空と呼んでよいのか躊躇うほど広い。ここでは空の中に地面がある。
iPodをシャッフルさせて車内に音楽を鳴らすと、Pizzivcato FiveやParis Matchやらの新旧渋谷系がやたら掛かる。Halcaliがドゥービーさんには不評。トイレ休憩を挟み走る事3時間、中継地Springfieldに着いた時に掛かっていたのはKatsumiの「Yes、抱きしめて」。図らずもリンカーンの立身出世の街とKatsumiという、捻じれの位置にある、そして生涯残る可能性が高い脳内リンクが構築される。
リンカーンが住んでいた家を見学する。無料で案内してくれたレンジャーは最近Springfieldに来たとの事。彼の話し方とイリノイ州の手厚い福祉政策方針から、ドゥービーさんはアルコール依存症からの復帰プログラムの一環で、この仕事に就いているのではと推測。肝心のリンカーンの家は、一部は当時を再現するための調度品があしらわれており、建物の内外を問わず若干綺麗に整いすぎているきらいがあった。意外に狭いが、当時としてはかなり広い家だったらしい。雰囲気を保つため、周囲の町並みも復元したり、当時の家を移築したりしたりと、観光地っぽさは否めないが地元の頑張りが見受けられる。
Springfieldの外れにある、コーンドッグ、日本で云うところのアメリカンドッグ発祥の店。Cozy Dog。味は極めて普通のアメリカンドッグ。ちなみにルート66上にある。この日は当旅行屈指の密接スケジュールの日なので、早々に平らげ一路南へ。
湿地が目に付き始めてからまもなくSt. Louis。西部開拓の玄関口、そして南部との境界。無意味にデカいGatewayは、アメリカ最大のモニュメントで、自由の女神より高い。昨晩のシカゴではダウンでも寒かったのに、今では半袖でも汗じっとりな高い気温と湿度。
St. LouisはBudweiserでおなじみの、Anheuser & Buschの本社がある街。工場見学へ。見学中、この旅行唯一の日本人に会う。何でも60歳で定年を迎え、独りでMLB巡りをしているとのこと。アメリカくんだりで野球場巡りという暇つぶしの旅をするには、このおじさんが遅すぎるのか、はたまた我々が早すぎるのか。スケジュールがカツカツで直後に運転が控えているため、砂を噛む様な想いでビール試飲を諦め、代わりといってはアレなImo's PizzaでSt. Louis PizzaとToasted Laviolliを食べる。St. Louis Pizzaはこの地域でしか流通していない独特の白いチーズに塩気があり、Fried Laviolliは文字通り焼いたラビオリを、Marinara Sauseでいただく。どちらも美味からず不味からず。
セントルイス・カーディナルスの本拠地である、この旅行3つ目の球場となる"New" Busch Stadium。町並みと同じく赤レンガを纏ったニューレトロパーク。2006年オープンとあって新しい。ビールはもちろんバドワイザーのみ。
ちなみに相手はこの人達。
3つ目の球場なので、3本目のドッグとなるHunter Dog。ソーセージが塩っぱい。塩気は南部の証か。
調味料のディスペンサー。ケチャップとマスタードだけでなく、ランチドレッシングとBBQソースもある辺りが南部の証。
Bank of America主催のキャンペーンにより、チケット代が半額になった内野3階席に座る。客足はそこそこだが、盛り上がりはプホルスの打席を除いてはいまひとつ。
特に気になったのが、カリル・グリーンが打席に立った時の、観客の無反応ぶり。レベルや環境は100段階ほど違えど、俺もカリルも共にサンディエゴを追われた身なので声援を送るが、スタンドはだんまり。「グリーンはロン毛だから嫌〜い。彼氏にするなら本命はリック・アンキールで、サイドにはスキップ・シューマッカーかなぁ。」と、俺と同じぐらい体重がありそうな20歳前後の女の子が友達に話していた。きっとグリーンより赤身の牛肉を食べているんだろうな。
ところで、この後シーズンが進むうち、グリーンは極度の不振によりレギュラーを追われてしまう。さらにストレスからSAD(Social Anxiety Disorder:社交不安障害)になってしまった様で、5月末に治療のためDL入りしてしまった。昨年手を骨折するほどロッカーを殴ったりなどという自虐的行動を見ると、パドレス時代から試合でのプレッシャーへの対応が出来ずに押しつぶされそうになっていたのかも。そういえば、その怪我による欠場分に対する年俸の返還要求をパドレスは取り下げたのだろうか。
個人的には、サンディエゴの球場で試合を見ていた時に、グリーンはネビンやホフマンよりも楽しみな選手だった。打率はたいしたことがなく大振りだが、左翼ポール際へのどでかいホームランは魅力だったし、何よりあのアクロバティックな守備は、テレビでなく球場で見てよかったという気持ちにさせてくれた。そして、そう思わせてくれる選手はなかなか居なかった。自分もこのブログでやれ出塁率がどうだとか派手な割にゾーンレーティングが芳しくないとか盗塁は得点効率が良くないとか書いたりするが、それはチームの勝ち負けに限定した話。Box Scoreではなく実際に身銭を切って見物するなら、1試合で3四球を選ぶセイバーメトリクス的に有り難い選手より、果敢な盗塁の瞬間や、グリーンのスライディングキャッチを観たい。似た様な症状からロイヤルズのザック・グリンキーは華々しく復活したので、グリーンに同様の回復を祈るばかりだ。セントルイス住民よりも熱く新宿区から応援している。必ずしも俺や周囲の身勝手な期待に沿った活躍や元気や「元通り」でない形の、活躍や元気であっても全然構わないからさ。
Buschは先代のアメフト兼用球場と比べ、格段にアメニティの質が上がったと思われるが、あまり試合に熱中しているファンは多くなかった様に見受けられた。リグリーはおろか、メトロドームより熱気は低い。Field of Dreamsの言葉を借りるなら、"If you build..."ではなく、"Even though you built..."といった具合か。球場自体の出来は決して悪くない。デトロイトのComerica Parkよりはずっと良いと思う。ここにしか訪れないファンにとっては何の問題も感じないだろう。球団やその地の歴史をモチーフにしたニューレトロパークは自分自身も嫌いではなかったが、Camden Yardsから15年近く経った今、既に効力の臨界点を越えた地に辿り着いた気がした。ツインズの次に出来上がる筈の、マーリンズやアスレチックス向けのフィールドは継承路線か、はたまた革新的なデザイン、どのような機軸を持つのだろうか。グリーンの4打席目の凡退を見てから球場を後にする。
宿泊先は郊外のCollinsville。この旅2回目のDays Inn。夜食に買ったAlmond Chicken Salad Sandwichが、加減を心得た控えめな味付けで美味かった。
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今日の走行距離は280マイル。ひとつの場所に留まらず、転がるようなドライブを続けた日。

